病院の日陰に陰キャは佇む

医者1桁年目の内科医が日々思った事を書いています。気づいたら結構毒吐いてるの注意

骨髄内輸液

先日さっさとやればよかったなあと思うことがあったので復習がてらまとめてみる



骨髄内輸液とは

骨髄内輸液というのは文字通り骨髄内に針を刺して輸液を入れる行為で心肺停止時などの緊急時であるにも関わらず末梢静脈路が取れない時に行われる。手元にはAHAのACLS2010のテキストしかないが,中心静脈カテーテルよりも優先度が高い。2015の現在どうなっているかは分からないが多分変わっていないだろう。
一応末梢静脈路からの薬剤投与と同等とされているが,動物モデルの研究が多いので100%そうかと言われると悩ましいところ*1

手技

骨髄内に骨髄針を刺す訳だが,大きく分けると用手式と機械式がある。

用手式

これは通常の骨髄穿刺針や一応輸液専用になっている骨髄穿刺針をぐりぐり刺す方法。やり方は通常の骨髄穿刺と一緒である。
1.場所を決めて
2.消毒
3.きりもみ回転しながら針を進める

ちなみにきりもみ回転するのは骨に当たってから。軟部組織でぐりぐりする必要はないので骨に当たってから力をかけて進めましょう*2
理論的にはどの針でも輸液できるはずであるが,添付文書をみると薬液投与について記載があるのはイリノイ骨髄穿刺針のみ。ディックマン骨髄内インフュージョンニードルは元々薬剤投与専用の針となっている。また、後者は24ヶ月以下の乳幼児用と添付文書に記載されている。
※PDF注意
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/261854/261854_16000BZY00644000_A_02_01.pdf
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/250288/250288_16300BZY01191000_C_05_02.pdf

機械式

機械式にはバネで針を射出して刺すものとドリルを用いて刺すものがある。ただ,後者しか見たことない。前者は後者の登場により製造終了しているようだ*3
後者はEZ-IOという製品であるが,使い方は見てもらった方が早いと思うのでリンクを貼っておく。クリニカルエデュケーションのリンク先に行けば動画で実際の様子が見れる(英語)
www.teleflex.com

比較

用手式では80%程度の成功率らしいが専用のデバイスを用いるとほぼ確実になるとの事*4
本邦でも練習の際にまずやってみろでやらせるとどうなるかという検討がある*5

穿刺部位

恐らく穿刺しやすいのは脛骨
・脛骨粗面から1-2cm程度内側にいったところ
・脛骨内顆から2cmぐらい上方(近位端)へいったところ
EZ-IOのサイトは上腕骨近位部(というか骨頭)を推奨している様子。心臓に近いというメリットがあるとの事。
・手を臍の上辺りに置く(回転させて腱を避ける効果がある)
・手を腹部に置けない場合は思いっきり外旋させる
・上腕骨骨頭を触って同定したら大体45度の角度で穿刺

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赤線で切った断面図を想像して欲しい(絵心はない)
小児では大腿骨という選択肢もあるがよく分からないので割愛

今回の反省点

まず救急外来に骨髄針がない。小児用のやつはあるんだけどそれを使うのもいかがなものか・・・。軟部組織の少ない脛骨には刺せそう。
さすがに病棟から骨髄穿刺針を持って来いというのも時間がかかる。CVCも一手段だがこれも時間がかかるし血管が変な走行していたら難しい可能性もある。
赤字病院なのでEZ-IO導入してくれとも言えない(まず先に色々改善してもらわなければいけないことがある)。
あ,外頸静脈見てなかったな。失念。

*1:AHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010

*2:よく分かっていない研修医にやらせると刺すときからぐりぐりしている。当院の採用がいくら安いメーカーだからって言ってもそこまで切れ味悪くない

*3:骨内医薬品注入キットという製品名

*4:Brenner T et al. Comparison of two intraosseous infusion systems for adult emergency medical use

*5:小山 泰明ら 本邦における医師・救急救命士・看護師の骨髄内輸液路確保手技の比較